M&A戦略とは?売却側、買収側企業の注意点やその目的について解説。
近年は中小企業においても経営戦略の手法としてM&Aは注目を集めています。
企業規模の拡大や後継者問題などの課題を解決するのに有効的であり、検討している企業担当者や経営者の方も多いでしょう。
この記事ではM&Aを成功に導くために重要なM&A戦略を買収側、売却側双方の視点から解説します。
M&A戦略とは?
M&Aを成功に導くには合併後、買収後のアクションを事前に想定した戦略が求められます。
M&Aの戦略の意義やチェックしておくポイントに関して説明しましょう。
M&A戦略の意義
M&A自体は元来売り手が強い市場であり、コロナ禍を経た現在も圧倒的に売り手市場である。優れた経営リソースを有する企業には、複数の買い手がつき入札案件となるので入札金額は高騰する一方です。
しかしながら経営環境の変化や、AIやDXなどによるデジタル化への対応も求められる中では、事業構造の変革はどの企業も避けられません。
そのような環境の中においてはM&Aに対するハードルも非常に高くなっています。厳しい条件の中でM&Aを成功させる為にもM&A戦略はとても重要といえます。
M&A戦略における正式な定義は決まっていませんが、M&A戦略とは自社の経営戦略実現のために定められたM&A活用の基本的方針といえるでしょう。
M&A戦略で検討すべき項目
M&A戦略においては下記の項目を十分に検討する必要があります。
自社の経営戦略との整合性
経営戦略とは、企業が目的を達成するためのシナリオに相当します。英語では「Strategy」にあたります。
経営戦略は、自社が市場の中で持続的に競争に打ち勝つ為に必要な考え方や企業の方向性を意味します。
経営戦略は、全社戦略、事業戦略、機能別戦略、その他戦略を包括しています。M&A戦略における経営戦略との整合性とは、全社戦略及び事業戦略と整合性が取れているか?合致しているか?を検討することでもあります。
ターゲット企業の選定基準
M&Aにおいてはターゲット企業の選定が重要になります。
経営戦略において自社が必要としている経営リソースをその企業は有しているか?ケイパビリティ(組織的な能力)は十分か?M&A実施後にシナジーは生れるか?といった項目を満たす企業を選定する必要があります。
マネジメントのルール
①の経営戦略との整合性、②のターゲット企業の選定及び選定基準の明確化をしながら同時に検討していくべき項目にM&Aのマネジメントルールがあります。
M&Aを円滑に進めていくために実行段階のルール、M&A後のモニタリングルール、更にM&Aを遂行する部署の設立まであると良いでしょう。
売却側企業のM&A戦略
売却側企業におけるM&A戦略には、自社の分析や市場調査を行ったうえで下記のポイントを検討することが必要です。
・売却後を視野に入れて目標の設定
・自社の強み、売却できる事業、特定の事業など「売り」に繋がる要素の把握
・売却交渉時における懸念事項の洗い出し(主に財務や法務、税務に関してリスクとなる事項)
・M&A以外の目的達成手段
・どのような企業に、どのタイミングで、いくらで売却するかの確定
買収側企業のM&A戦略
買収企業も同様に下記の項目を検討した上でM&A戦略を策定する必要があります。
・買収後の事業展開、及び経営目標の設定
・M&A以外の目的達成手段の検討
・M&Aにかかる費用の想定、及び予算の確保
・獲得する経営リソースやケイパビリティの特定、把握
・自社の経営リソースとの統合方法、整合性の確認
・どのような企業を、どの様なM&Aで獲得するかの確定
M&A戦略を行ううえで気を付けた方が良いポイント
M&A戦略を策定するうえで留意すべきポイントを売却側企業、買収側企業双方の視点から見てみましょう。特にM&A戦略の中で目的を明確化することは双方の企業にとってM&A戦略の要となります。
売り手側の目的
大手企業、上場企業の様に複数事業を抱えている企業においては、M&Aを実施することで不採算事業や部門を手放し、中核事業への「選択と集中」になる効果があります。
また非上場企業や中小企業、ベンチャー企業においては、事業の承継やイグジット(株式売買による投資回収)を目的としてM&Aを実施するケースが多数を占めます。
M&Aによる事業承継は後継者不足に悩む創業者の課題解決に、M&AによるイグジットはIPOよりも短期間で投資回収ができるというメリットをそれぞれ持ちます。
買収側の目的
買収側企業におけるM&Aの目的には、新規事業への参入、事業の多角化、既存事業の拡大化などがあります。
自社で解決するには時間を要する、経営リソースが不足しているので課題解決が困難な場合にM&Aは有効な手段といえます。
新しい事業を立ち上げて成長させる、事業の成功を実現する、どれも長期に渡ってしまう中で、M&Aには課題解決を短期間で実現するメリットがあります。時間を短縮し効率よく経営成長を達成する事こそM&Aの醍醐味といえます。
M&Aの必要性・見通しについての見極め
売却側企業、買収側企業共に留意すべき点として、「そのM&Aは本当に必要か?」といった視点は持つべきです。
自社の分析や市場調査を経た上で最適な手段としてM&Aが挙げられるのであれば遂行すべきですが、他にも選択肢があるのであれば別途検討すべきでしょう。
またM&Aの過程において見通しが甘かったり、自社事業の経営戦略と整合性が合致しないままM&Aを遂行しようとすると合併・買収後に想定していたシナジーが生まれない、許認可や契約の問題でそもそもM&Aができないなどの致命的な事態を引き起こすリスクがあります。
特に買収側企業においては、失敗するリスクを常に念頭におきながらM&Aを行うことが大切です。
まとめ
M&Aは今後もより一層スタンダードな経営手法として、日本の企業間で浸透していくことでしょう。
企業規模に関わらずM&Aを成功に導くためには、M&Aの実施後までを想定した戦略が必要になります。売却側、買収側を問わず自社の分析を十分に行った上でM&A戦略を策定しましょう。