M&Aの補助金について、対象者や支援内容などを解説します。

M&Aにおいて国から補助金が得られることはご存じですか?
日本における事業承継や後継者不足の問題は社会問題化が著しく進んでいます。
後継者を見つけられない企業、とりわけ中小企業においては後継者がいなければそのまま廃業してしまう会社が多数あります。
企業の貴重な経営資源を将来に残すための施策としてM&A補助金が受けられる制度が日本にはあるのです。
この記事ではM&Aにおける補助金の基礎的な情報や対象者、支援内容などを解説します。
M&A補助金とは
現在、中小企業における後継者不足が深刻な社会問題となっています。
特に中小企業においては、2025年までに381万企業の内245万企業の経営者が70歳を超えるという統計データが出ています。
中小企業では約6割以上が事業承継の課題を抱えているといっても過言ではありません。
中小企業の貴重な経営資源を次世代に繋ぐためにも事業承継は早急に解決すべき問題なのです。
その様な課題を背景に、経済産業省中小企業庁が運営する「事業承継・引継ぎ支援センター」と、民間の「M&A支援機関(専門仲介業者等)」の連携が実施されることとなりました。
2021年4月28日には「中小M&A推進計画」が取りまとめられ、下記3つの施策を実施する運びとなりました。
・事業承継・引継ぎ補助金の本予算化
・経営資源集約化税制の新設
・設備投資減税・人材投資減税の拡充
本稿で取り上げるM&A補助金は「事業承継・引継ぎ補助金の本予算化」に該当します。
補助の支援形態
これまでM&Aにおける国のサポートは、事業を譲り渡す側(売却側企業)に対してされてきました。
譲り受ける側(買取側企業)に対してのサポートは微々たるものでしたが、「中小M&A推進計画」におけるM&Aの補助では買取側企業へのサポートも厚くなりました。
さらに補助対象になる条件や支援対象者を、「経営革新」「専門家活用」の2つの類型に分類するなど内容も事細かくなっています。
経営革新
まずM&Aを実施することで経営革新を目的とする費用が補助金(対象費用:設備投資費用、人件費、店舗・事務所の改築工事費用等)の対象となり、更に3つの形態に分類されます。
創業支援型
創業支援型は、廃業予定の企業などから「有機的一体として機能する経営資源」を引き継いで創業した中小企業や小規模事業者を対象としたものです。
以下の1及び2の要件を満たすことが必要です。
・創業を契機として、引き継いだ経営資源を活用して経営革新等に取り組む者であること。
・産業競争力強化法に基づく認定市区町村又は認定連携創業支援事業者により特定創業支援事業を受ける者等、一定の実績や知識等を有している者であること。
経営者交代型
事業承継(事業再生を伴うものを含む)を実施する中小企業等が対象であり、下記1~3の項目における要件を全て満たすことが必要です。
・事業承継を契機として、経営革新等に取り組む者であること。
・産業競争力強化法に基づく認定市区町村又は認定連携創業支援事業者により特定創業支援事業を受ける者等、一定の実績や知識等を有している者であること。
・地域の雇用をはじめ、地域経済全般を牽引する事業等創業を契機として、引き継いだ経営資源を活用して経営革新等に取り組む者であること。
M&A型
事業再編や事業統合等を実施する中小企業者等が対象です。
下記1~3の項目における全ての要件を満たすことが必要になります。
・事業再編・事業統合等を契機として、経営革新等に取り組む者であること。
・産業競争力強化法に基づく認定市区町村又は認定連携創業支援事業者により特定創業支援事業を受ける者等、一定の実績や知識等を有している者であること。
・地域の雇用をはじめ、地域経済全般を牽引する事業等事業承継を契機として、経営革新等に取り組む者であること。
関連する記事について

専門家活用
M&Aによって経営資源を引き継いだ、もしくは引き継ぐ予定のある中小企業者や小規模事業者が対象となります。
2種類の形態(買い手支援型(Ⅰ型)、売り手支援型(Ⅱ型))があり、M&Aを実施するにあたっての幅広い費用(M&A実務に必要な旅費や交通費、デューデリジェンス費用、表明保証保険の保険料、仲介・FAなど専門家への業務委託料など)が補助対象となります。
買い手支援型(Ⅰ型)
事業再編・事業統合等に伴う経営資源の引継ぎを行う予定の中小企業者等で、下記1,2の項目全ての要件を満たしている必要があります。
・事業再編・事業統合等に伴い経営資源を譲り受けた後に、シナジーを活かした経営革新等を行うことが見込まれること。
・事業再編・事業統合等に伴い経営資源を譲り受けた後に、地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業を行うことが見込まれること。
売り手支援型(Ⅱ型)
事業再編・事業統合等に伴い自社が有する経営資源を譲り渡す予定の中小企業者等で、下記の項目の要件を満たしている必要があります。
・地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業等を行っており、事業再編・事業統合により、これらが第三者により継続されることが見込まれること。
M&A補助金の対象者
経営革新型では事業承継、M&A(経営資源を引き継いで行う創業を含む。)を契機として、
経営革新等に挑戦する中小企業・小規模事業者が補助金の対象ととなります。
専門家活用では、M&Aにより経営資源を他者から引継ぐ、あるいは他者に引継ぐ予定の中小企業・小規模事業者が対象で、どちらも個人事業主を含みます。
こんな方におすすめ
事業承継・引継ぎ補助金は新しい事業へのチャレンジや廃業が対象です。
以下を検討している企業や個人で事業成長を考えている方には有効的な補助金ではないでしょうか。
新規での開発やサービスの提供を行いたい
既存の経営資源だけでの経営成長には限界があります。
企業の拡大を検討しているのであればM&Aを活用した新規事業や新規開発を実施することで新たな市場への参入が短期で効率良くかなえられます。
新しい顧客層の開拓に取り組みたい
上記に付随して新しい商品の開発や新規サービスの開発をM&Aにより実現することで、新しい顧客の獲得に繋がります。
従来の顧客層と違った顧客の獲得は新しいフィードバックとなり好循環を生み出します。
新たに別の事業活動を始めたい
事業承継・引継ぎ補助金では、経営革新(事業再構築、設備投資、販路開拓等)に関わる費用や、M&Aに係る専門家を利用した活用費用(M&A支援業者に支払う手数料、デューデリジェンスにかかる専門家費用等)が補助対象になるので、M&Aを利用して新たに事業活動を始めたい方にもオススメです。
廃業・再チャレンジをしたい
従来からM&Aの売却側に対する補助体制は厚く後継問題から第三者に会社を売却したいと考えている方や、売却益を基に再チャレンジを検討している方でも受けられる補助金制度です。
まとめ

国が取り扱うM&A補助金(事業承継・引継ぎ補助金)について解説しました。
令和2年度の「事業承継補助金」と比較して補助額上限や補助率は減額しましたが、採択率は依然高く今後も維持すると予想されますのでM&Aを検討しているのであれば有効に活用することをオススメします。
また国とは別に各県や地域ごとに別途補助金が受けられるケースもあるので、先ずは自ら調べてみるといいでしょう。